贔屓サイト様による「二万ヒット感謝の気持ち」のFREE小説。
作者様からのコメントは----サイト初の幼年時代もの。キラの勘違いに振り回されるアスラン。実話が元になってます(笑)




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勘違い
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『アスラン、今までいろいろとありがとう。僕は遠くに行く事になりました。遠く離れても君の事はけして忘れません。空の星になって君の事を見守っています。―――キラ』

突然、友人からこんなメールをもらったら、あなたならどうしますか。



「・・・なんだろう、これ」


今日の授業もすべて終わり「さあ、家に帰ろうか」というところで届いたメールに、アスランはぽつりとそんな呟きを落とした。
彼の親友はいつも突拍子もない事を口にする。
しかし今回のこれはまた一体何だというのだろうか。
今日、キラは学校を休んでいる。
今朝、いつものようにキラの家まで迎えに行くと彼の母親が顔を出し、

「ごめんね、アスラン君。キラ風邪をひいちゃって、今日は学校お休みさせようと思うの」

そんな事を言っていた。
その時は「大丈夫かな」と心配する程度だったのだが、このメールの内容からするとキラの症状はあまり良くはないらしい。

「っていうか『空の星』って・・・」

そこまで考えてアスランの顔がさっと青ざめる。
たいした事はない、とキラの母親は言っていた。ただの風邪だから、と。
でももし「ただの風邪」じゃなかったら?
そう、例えば命にかかわるような・・・。




忙しなく鳴り響くチャイムの音に、しかしキラの母親は慌てることなく玄関へと向かう。

「は〜い、どなた?」

おっとりとした声で訊ねると、扉の向こうからは何やら苦しそうな息遣いが聞こえてくる。

「・・・っ、すみ・・せ・・・。僕・・・っです・・」
「まぁ、アスラン君?」

聞き慣れたその声に扉を開けると、鞄を背負ったまま苦しそうに肩で息を付くアスランの姿があった。

「あらあら、大変。中に入って。いまお水を持ってくるから」
「す・・すみっ・・・ません・・・」

ぜーはーと肩で息をしながらも律儀に謝る。
キラの母親が持ってきてくれた水を一息に飲むと、アスランはようやく落ち着きを取り戻した。
その様子をひとしきり眺めてから、相変わらずおっとりとした声でキラの母親が訊ねてくる。

「一体どうしたの?そんなに慌てて」
「あのっ、キラは!?」
「キラ?お部屋で寝てるわ。あの子ったら昨夜お風呂上りに窓を開けたまま寝ちゃって・・・本当にしょうがないんだから」

「困った子ね〜」と苦笑しながら言う姿は、キラの病状が大した事はないと知るには十分で。
アスランはパチパチと瞳を瞬かせた。


(―――だったらあのメールは・・・?)


キラのイタズラとも思えない。
あんなふうに性質の悪いイタズラをするほどキラは擦れてはいない。
とにかくキラに会ってみようと、母親に「会えるますか」と訊ねると快くOKしてくれた。
勝手知ったる何とやらでキラの部屋の前まで行くと中から泣き声が聞こえてくる。

「キラ?」

ノックをしてから扉を開けると目にいっぱい涙を浮かべたキラが驚いたようにアスランを見る。

「ア・・・アスラン?どうしたの?」
「それはこっちのセリフだよ。あんなメールもらったら心配するのは当然じゃないか」

言いながら、勉強机の椅子を引っ張ってベッドサイドに置くとそこに腰掛ける。
見たところキラの様子は今すぐにどうこうという訳でもなさそうだ。
ひとまず安心したアスランは謎のメールについてキラに訊ねる。

「一体何があったんだよ。遠くに行くとか、星になるとか書いてあったから、てっきり病気が酷いのかと・・・」
「だってっ、だって僕死んじゃうんだよ!」
「・・・・・・・は?」

再び涙の溢れた瞳で真剣に言ってくるキラは、とても自分をからかっているようには見えない。

「死んじゃうって・・・そんな風邪くらいで大袈裟な」
「でもっ、テレビのニュースでいっぱい死んでるって言ってたもん!」

だから自分も死んじゃうんだと喚くキラの姿を見て、アスランは「あぁ・・・」と内心で溜息を吐いた。
キラが言っているのは、おそらく最近ニュースでよく聞く何とか言う動物の病気の事だ。
確かに大量の動物が死んでいるらしいが、それはあくまで動物の病気。
人間にうつる事はまずないと新聞に書いてあったし、もちろんニュースでも言っていたはずだ。
しかし滅多にかからない病気になり、更にタイミング悪くそんな事を耳にしたキラは、自分もその病気だと勘違いしてしまっているようだ。

(―――まったく・・・普通気付くだろ・・・)

げんなりと肩を落としたアスランに、キラは泣きながら言葉を続ける。

「だから・・・死んじゃうまえに一言アスランにお別れを言っておこうと思って・・・。今までいっぱい迷惑かけてごめんね。僕・・・、僕・・・っ」

そこまで言うのが精一杯で、キラは大きな瞳からぼろぼろと涙を零す。
その様子に「いや、呆れている場合じゃない」と、アスランはキラの勘違いを正すため、彼の持てる知識の全てを使って説明を始める。



キラが自分の勘違いに気付いたのは、それから実に三時間後の事だった。

written by モノクロの世界:秋津るの様

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UpData 2005/06/20
by(c)RakkoSEED