贔屓サイト様の2万ヒット御礼のFREE小説。
設定は『fly high』と同じく、ちまキラです。
キラはちまであってもなくてもイザは女王、ディアッカ哀れ・・・




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幼気盛り
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イザークはヴェサリウスの談話室にいた。



キラは退屈だったのか、部屋から出ていった。

「遠くには行くな」とは言いながらイザークがキラの一人歩きを許すのにはもちろん理由がある。

最近キラはお菓子のおまけでついていた赤いおもちゃの笛を吹くのが好きらしく、始終ピーピーとどこかでなっている。

肺活量がないからそんなに大きな音ではない。

それでもイザークは本を読みながらその音がそう遠くではないところで鳴っているのを確認していた。

その音が聞こえる範囲ならばキラが何処にいるのか大体想像がつくため、イザークは近くならキラが一人で歩く事を許している。

いつまでキラがその笛を手放さずに吹くかはイザークにはわからないが、その笛をキラが気に入っている限りこの状態は続くだろう。



ピーピーと鳴ったりピッピッと鳴る笛の音。

キラの機嫌の良さを表すような明るい音が響いている。

キラは何をしていても楽しいらしいなと思うと自然とイザークの顔が穏やかなものになる。

暫くすると、笛の音が談話室にどんどん近付いてきた。

イザークは読んでいた本をテーブルの上に置いてキラが来るのを待っていた。



ドアが開き、笛を首から提げたキラがたったったっとイザークの元に走っていく。

キラはイザークの座っているソファーに辿り着くとイザークの足にぺったりと張り付いた。

えへへと嬉しそうに笑いながらイザークの太股に顔をこすり付ける。

4歳なんてまだまだ甘えたい盛りなんだろうとイザークは微笑ましく思い、キラの体温を心地よく感じていた。



イザークの足に張り付いたままキラがイザークを見上げる。



「ねぇ。おにぃたん」

「なんだ?」

「にまんどる」

「何?」

「にまんどる、ちょうだい」

「何に使うんだ?」

「いいからぁ」



キラが口を動かす度にカラカラという音がしてイザークは小さな口の中を凝視した。

ピンク色の飴が入っている。

イザークには自分が渡した覚えも持たせた覚えもない。

そしてキラが突然言い出した言葉。

2万ドルなんて子供が使うには大きすぎる額である。

キラの言った言葉と飴から、キラが唐突にこんな事を言い出したおおよその理由がイザークの頭の中で把握された。



「・・・キラ。それは誰に言えと言われたんだ?」

静かにイザークが聞くと、キラは可哀相なほどにびくっと体を揺らした。

「きっ・・・キラ、しら…ない、よっ」

幼いなりに『誰か』との約束を守ろうと努力しているのだろう。

目を逸らしてそわそわしながら上ずった声で言葉につまりながら必死にキラは答える。

「そうか」

そう言うとほっと息を吐くキラの正直さにイザークは苦笑を零しそうになった。

イザークは自分の膝に手をついて立っているキラを抱き上げて膝の上に座らせる。

もう安心しきったのか、また嬉しそうにキラは笑ってイザークにぎゅっと抱きつく。

「飴は誰にもらった?」

「あめしゃんでぃあっかがくれたの」

そういうと口を大きく開いてイザークに飴を見せる。

それは答えるなとは言われていないらしいなとイザークは思い、『誰か』の計画の甘さを口端で笑った。

イザークはキラの桜色の頬にキスをして小さな背中を上下にゆっくりとさする。

「誰かに物をもらったらちゃんと言えよ」

「はぁい」

「いい子だ」

右手をまっすぐ上に伸ばして生き生きと返事をするキラの頭をイザークが撫でた。

キラは誉められた事が嬉しかったのか、無邪気な笑みを零す。



イザークは再びキラの頬にキスをすると、

ドアの外で先ほどからの会話を聞いていたであろう人物が凍りつきそうな程に鋭い声で声をかける。



「出てこい。今なら聞かなかったことにしてやる」



これから十三階段を上る人間のような気分でディアッカが扉をくぐって談話室に入った。



「え、えと・・・・・・ごめんなさいっ!!」



ディアッカは言い逃れる術を持たずにドアの傍で土下座を始める。

聞かなかったことにしてやる、なんて口先だけだとディアッカはわかっている。

「キラを使おうなんていい度胸だな」

冷ややかな口調で喋るイザークに、付き合いの長いディアッカは彼の怒りの凄まじさをひしひしと感じていた。

「だって女の子達に金かかるんだって!」

ディアッカは怯えながらも言い分を何とか主張する。

「貴様の給料でやればいいだろうが!」

語気が荒くなったことで冷ややかな言葉をかけられるよりは怒りが収まってきたかもしれないと思い、ディアッカは微量の安心を得る。

ディアッカはそう考えた自分を情けなく思いながらも降りかかる災いが軽くなることを願った。

自業自得だと後悔して自分の計画の甘さを悔やんだところで既に後の祭り。

ディアッカには開き直るしか道が無い。

「足りないんだって!」

「知るか!」



「でぃあっかってばおにぃたんにおこられてるの〜わるいこなの」

誰のせいだよ…と思う余裕も無く、ディアッカはこれからの自分はどうなるのだろうかとただただ心配していた。

written by mangels:澪様

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UpData 2005/06/22
by(c)RakkoSEED