種ウサシリーズ・キラウサギ編の小話集。
5歳児並キラちゃんはウサ耳&尻尾付きで、飼い主はアスラン。
今回はイザを飼っている(笑)ディアッカも登場!
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種ウサシリーズ キラウサギ小話
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※ ※ ※
小話1
※ ※ ※
朝の7時。
今日は朝一番の講義を取っているからそろそろおきないといけない。
アスランはぼんやりと時計を見ながらそう思った。
それにキラの仕度は時間がかかる。
最近、大学にいつもキラを連れて行くようになった。
朝が弱いキラうさぎ。
今日みたいな早い日はまだ眠そうにしているくせに、それでも連れて行かないと拗ねてしまう。
アスランは朝食を作ろうと起き上がった。
ビリッ
とすんっ!
「にゅっ!」
聞きなれた音。
またか・・・・・・・・・・
アスランは自分の胸元から聞こえた音にため息をつく。
破れているパジャマの上着。
キラには沢山の変な癖があった。
その中の一つ、なぜかアスランのパジャマの上着の中に入って眠るということだ。
アスランがおきているときは普通に眠っているのに、朝、目が覚め起き上がるとキラの重みに耐え切れずパジャマが破れ、そこからキラが転がり落ちる。
これで何着のパジャマの上着を駄目にしてきたのだろうか。
最近ではキラが落ちる前に手で支えたりするときもあるのだが、やっぱり朝のぼんやりしている時だからこんなふうに破ってしまうときが多い。
「キラ大丈夫か?」
自分のパジャマを破って転がり落ちたキラをアスランは抱き上げる。
しかし、ベットに落ちたためそう衝撃がなかったせいもあるのか、キラはいまだにすやすやと眠っていた。
これもいつものことだった。
「キラ、朝だよ。起きないと」
アスランはキラを軽く揺すり起こそうとする。
でも、そんなことでおきるキラだったら先ほどの衝撃でおきている。
気持ちよさそうに眠っているキラ。
アスランだって本当は起こしたくは無いのだ。
「キラ、起きないと大学に連れて行けないよ。」
「にゅっ!!駄目、付いて行くもん!!」
どんなに揺り動かしても起きないくせにこういうとすぐに起きるキラ。
アスランは一生懸命目をこすって起きようとしているキラに微笑むと、キラを抱えて洗面台に行った。
※ ※ ※
小話2
※ ※ ※
涼しい秋の風が窓から入ってくる、穏やかな昼下がり。キラが大学の学食は飽きたというので、今日は授業の無い教室で、アスランの作ったお弁当を食べていた。
隣に座って小さな口を雛鳥のように精一杯開けたキラに、細かく切ったハンバーグを食べさせるアスラン。
「のど乾いた〜」
ハンバーグを嚥下すると、キラはアスランにそういった。
アスランは持ってきた水筒を取り出して、お茶を注ぐ。
ふとキラの目に同じ教室内で昼食をとっている数人の女の子のグループが入った。
少しだけ頬を赤く染めチラチラとこちらを見ている女の子たち。
大好きなハンバーグを食べて、とても気分が良かったのに、その女の子たちの視線がアスランに注がれていることを知って、キラは不機嫌になった。
アスランはこの大学では非常に有名人だ。
たくさんの教授をうならせる程の論文を書く能力の高さもあるが、タレント顔負けのその容姿が主な理由だった。
アスランが大学に連れて行ってくれるのはとてもうれしい。
アスランと一日中一緒にいることができるからだ。
授業の時は仕方がないけれど、休みの時間はいつもキラにかまってくれる。
でも、そんな時間を邪魔する存在がいた。
それが、キラの目に入ったグループのような女の子たちだ。
なにかと理由をつけては、アスランに話しかけようとするので、せっかくアスランが自分にかまってくれているのを台無しにするのだ。
今だって、小さな声でアスランに話しかけるかどうかを話し合っている。
アスランには聞こえないかもしれないけれど、種ウサギのキラの耳には会話の内容がバッチリ聞こえているのだ。
『かっこいいvv話しかけようよーvvv』
『えー、でも、恥ずかしいよ。』
『でも、こんなチャンスめったに無いよ。』
『みんなで話しかければいいじゃない。』
「むぅ〜〜〜〜」
キラはその会話を聞いてキラは頬を膨らませる。
アスランは自分と一緒にご飯をたべているんだからその邪魔をしてほしくない。
それに、それに、アスランは僕のだもん。
キラはそう思うと、その女の子達にアスランは僕のものと主張するように、アスランの膝に移動する。
そして、アスランの広い胸にスリスリと頬を擦り付けた。
『きゃーーー(><)あの、種ウサギになりたいぃーーー』
『うらやましいーーーー』
「キラ、どうしたんだ?」
急に甘えてくるキラの頭をアスランは優しくなでる。
「なんでもないもん。」
「?。はい、お茶だよ。」
アスランから貰ったコップをキラは両手で掴むと、ほどよく冷めたお茶を飲む。
遠くで、女の子たちがきゃーきゃーとキラのことを羨ましがっているのを聞いて、思い知ったかと思いながら。
これで、近づいてこないと思ったキラ。しかし、その考えは甘かった。
アスランは自分のものだと主張して、アスランとのことを見せ付けたキラ。
でも、女の子たちの目にとって、ただアスランの飼っているペットがアスランに甘えたにすぎないのだ。
再び、アスランに話しかけるかどうかを放し始める女の子たち。
キラは再び不機嫌になった。
アスランとキラの時間を邪魔するのも気に食わないのだが、何より自分が全然そういう対象として見られていないことに腹がたった。
確かに、キラは種ウサギで、アスランのペットだけれど、アスランは毎日キラのことを好きだといってくれている。
アスランの一番は自分だし、もちろんキラの一番はアスランだ。
こういうのを『アイジン』って言うとこの間TVで言っていた。
だから、アスランの『アイジン』はもういらないのに。
どうしたら、あの女の子たちにそれを教える方法があるだろうか。
キラはTVドラマで見たことや、雑誌に書いてあったこと、たまに黒くて大きな優しい人(←ディアッカ)が見ていた本などを思い出しながら考えた。
「キラ、デザートはチョコレートプリ・・・・・むぐっ・・・・」
考えた末に行き着いた行動。
この間、ドラマでしていた『アイジン』の証拠。
キラは自分の唇をアスランの唇に押し付けたのだ。
「・・・・ぷはっ!キラ、いきなりなにを・・・・」
「するんだ」と続けようとしたアスラン。
しかし、近くで上がった悲鳴に驚いて、悲鳴の上がったほうを見る。
そこにいた、数人の女の子のグループはアスランと眼が合うと再び黄色い悲鳴を上げる。
な、なんなんだ・・・・・?
何が起こったかさっぱりわからないアスラン。
しかし、大きな悲鳴のせいなのか、この教室にいるほかの人々の視線を一身に浴びている。
誰かにじろじろ見られるのはなれているのだが、こう注目されているのは居心地が悪い。
アスランは少し考えると、別の教室に移動するために、お弁当などを片付け、キラを抱きかかえると教室を出て行った。
アスランが教室を出るとき、キラはしっかりと女の子達をけん制するために睨む。
思い知ったか!
そう心の中で思いながら。
※ ※ ※
小話3
※ ※ ※
なんだかパターン化してしまった、ディアッカとの昼食。
別に時間を示し合わせているわけではないのだが、なぜか食堂で顔をあわせてしまう。
顔を合わせたからには、色々と話すこともあり(もっぱら種うさぎのことについて)、一緒に昼食をとることになるのだ。
「なんだそれ?」
ディアッカはアスランに抱っこされているキラの頭に不恰好に結ばれたリボンが気になってアスランに聞いた。
女の子だということが判明したキラ。
正直言って今までアスランはキラを男の子として扱っていたので、キラの洋服や持ち物はすべて男の子用なのだ。
だから、すぐにペットショップへ行って、女の子用の服や道具をキラのためにそろえた。
しかし、ペットショップにある女の子用の種ウサギの服は皆、いわゆるゴスロリというやつで、着せ方が複雑な上に動きにくい。
今まで男の子用の服で遊んでいたキラはその窮屈さを嫌がり、アスランの方も着せ方がよく分からない服を着せるよりは、キラがいいというのだから男の子用の服でいいだろうと思い、男の子の服をそのまま着せることにした。
しかし、キラは女の子だ。
せめてと思い髪にリボンをつけてみたのだが、いままでリボンなんてつけたことがないアスランの結んだリボンは当然、不恰好なものになってしまった。
そんなことをアスランはディアッカに話した。
すると、ディアッカはキラがひょっとしたら女の子ではないのかと薄々気付いていたらしく、「まじかよ」と言った。
「そういえば、イザークと比べると体が一回りくらい小さいし、ふにふにして柔らかいから何か違うなって思ってたんだよな。」
「知っていたなら教えてくれればいいじゃないか」
「べつに女の子だって知っていたわけじゃないぜ。キラはよく食べるだろう。だから、イザークより柔らかいのかなとか思ってたし、小さいのも身長には個人差があるからなとか思ってたんだ。それより、アスランは一緒に寝てるし、風呂入ってるし、なんでもかんでも一緒なんだろう?お前が気付かない方が変だぜ。それよりも、そのリボン結びなおしてやるよ。」
ディアッカはそういうと、手を伸ばして、アスランの膝の上で大好きな卵サンドイッチを食べているキラのリボンをほどいた。
いつほどけても不思議ではない、かろうじて髪に引っかかってただけのリボンは簡単に解ける。
「にゅ?」
キラの頭の右サイドにある一番長い髪の一房をとって、ディアッカは器用に編んでいく。
今までの経験からディアッカが自分に危害を加えるような人間ではないことを知っているキラは、髪の毛のことより手の中のサンドイッチの方が重要だからそれを食べることに集中する。
しばらくして、ディアッカはその編んだ髪に綺麗にリボンを結んだ。
「ただリボンつけりゃーいいってもんじゃないぜ。こうすると可愛いだろう。」
綺麗に三つ編みされた髪。
リボンはちょうどキラのあごの部分にふわりとつけられ、キラが動くと小さく揺れる。
「なるほど、勉強になった。それにしても、お前はとことん見た目に反してるな。」
ディアッカは見た目に反した特技が多い。
裁縫はできるし、料理もできる。
しかも、料理は日本料理が得意だという話だ。
「別にそうでもないぜ。前は多分見た目通りだったと思うんだが。イザークを飼い始めてから、あいつのわがままに答えてたら、裁縫や料理が上手くなってきただけだぜ。」
好き嫌いが激しいから、いろいろ献立を考えないといけないとか、すぐに喧嘩するから服がぼろぼろになるとか、内容に反してうれしそうに話すディアッカ。
ディアッカがイザークのことを話し始めると長いことを知っているアスランは、適当に相槌を打ちながらキラの世話する。
やっぱり、ポロポロとサンドイッチの具をこぼしているキラ。
口の周りにも卵が一杯付いている。
それをティッシュで綺麗に拭きながら、アスランはキラのリボンを見てニコリと微笑んだ。
「キラ、とっても可愛いよ」
それは何気なく言われた台詞であったが、多分アスランにあこがれている女の子が聞いたら卒倒しそうな甘さを含んだものであった。
言われた本人であるキラも幼いながらその言葉に頬を染め、目を輝かせる。
「本当〜?」
「本当だよ。こんなに似合うんだったら、もっといろんなリボンを買おうか?」
キラはコクコクと頷く。
はっきり言ってリボンにはまったく興味が無かったキラ。
アスランが今日結んでくれたけれど、アスランがかまってくれて嬉しいとは思ったが、リボンを結んで嬉しいとは思わなかった。
けれど、アスランが「可愛い」と言ってくれるなら別だ。
沢山リボンを結んで、沢山アスランに「可愛い」と微笑んでほしい。
それに、アスランはリボンを結ぶだけでかなりの時間がかかる。
それだけ、キラにかまってくれる時間が増えるということだ。
キラがそれを思って嬉しそうにしているのを、「やっぱりキラは女の子だから、リボンとかそういうのが好きなんだな」と勘違いするアスラン。
アスランが今まで男の子だと思っていたから、そういう装飾品はまったく買っていないことを反省していると、イザークの自慢話を終えたディアッカが思い出したようにアスランに言った。
「そういや、種うさぎの女の子いろいろ変質者に狙われて危ないんだろう。アスランも注意しろよな。」
「そういえば、そういう話を病院の先生に聞いたな。そんなに危ないのか?」
「種ウサギってのは、基本的に雌が生まれる確立が少ないらしいんだ。だから、ペットショップに行くと雄より雌の方が高い。それに、雄より雌のほうが病気になりやすいから、無事に大人になる確率がすくないらしい。種うさぎってのは大人になったら人間でいう13歳くらいの見た目で、しかも、うさ耳+しっぽが付いてるから、もともと雄や雌に限らず変質者に狙われやすいうえに、雌は数が少ないから誘拐とかされて好事家に高値で売られるらしいんだ。俺のイザークは男の子なんだが、女の子に間違われて誘拐されないかいつもヒヤヒヤしてるぜ」
といいながら、再びイザークの話になるディアッカと再び適当に相槌を打ち始めるアスラン。
そういえば、病院に行くと大人の種うさぎの雄は見るのに雌は見かけない。
アスランはキラをじっとみる。
飼い主の欲目を抜いても、キラは絶対可愛い。
それに、ただでさえ辛い過去を持っているキラに、さらにオークションで売られるなんていう辛い経験をさせたくない。
「キラ、知らない人がお菓子をくれるって言っても付いていったら駄目だよ。」
「は〜い!」
再三キラに言い聞かせていることをキラに言う。
けれど、キラが知らない人についていくというのは、あまり考えられない。
保健所の職員に無理矢理檻に入れられた経験があるキラは、人間の大人を怖がり、初対面ならまず付いて行かないし、逆に逃げるだろう。
それよりも問題なのは、力ずくで連れ去られる心配だ。
「うさぎ」と付いているくせに、キラはやたらとトロい。
走るとすぐに転ぶし、普段ぽ〜っとしているので危険を察知する能力もあまりない。
かなり問題だ。
「でさ、イザークは下ろしてハンバーグに入れたピーマンにも気付いて、嫌いなピーマンを食べさせようとしたからって、怒り狂うんだぜ。は〜どうしたらピーマンを食べさせられるんだろうな。それに・・・・・」
横でなおも続く、ディアッカの愚痴という名の惚気。
そんなものはすでに少しも耳に入っていないアスランは、キラをどう悪漢から守ろうと悩んでいた。
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小話4
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(最後まで進んだという設定で)
キラ「アスラ〜〜ンvvvこれ(アスランに卵を渡す)」
アスラン「卵?」
キラ「あのね、これ温めたら赤ちゃんがうまれるの〜〜vvv」
アスラン「え!!!」
キラ「アスランがパパで僕がママだよねv」
アスラン「え!?まさか!!(この間のアレが原因だよな。でも、1週間で卵が生まれるって早くないか・・・いや、それよりも『種ウサギ』って卵生なのか・・・そうじゃないだろ!出生届とか出すべきだよな。種うさぎとして?でも半分俺の子だから人間でもあるんだよな。)」
キラ「お外で拾ったの〜。何が生まれるのかな////////」
アスラン「(名前とかどうしよう。やっぱり画数とかって大事だし、そういう専門家に聞いたほうが・・・・・←キラの話を全然聞いていない)」
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小話5
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窓から注ぐキラキラとした朝日。
それがあまりにまぶしくて、アスランは深い眠りからゆるゆると覚醒していった。
息が白くなるくらい冷たい空気は、この元旦の朝をより清廉なものにしていて。
新年か・・・・・
アスランがぼんやりと薄く目を開けながらそう思った瞬間、世界は茶色一色に染められた。
「にゅ〜、雪vvv」
自分の顔をくすぐるぽやぽやとした毛。
嗅ぎ慣れたベビーシャンプーの匂い。
それはさらにアスランの襟元を大きく開かせ、アスランの服の中から賢明に出ようとする。
なんでそこから出ようとするんだ!
キラにはなぜだか分からないが、アスランの服の中で眠るという癖があった。
いつもは、アスランが先に起きるので、キラはパジャマを破ってコロンとベットに落ちるのだが、今日はどうやら早く起きたらしくなぜだかアスランの襟元から必死に出ようとしているのだ。
完全にキラの髪の毛に顔が埋まっている状態のアスラン。
そこで、自分のパジャマから鈍く裂けるような音が聞こえてきて、アスランはキラを叱ろうとした。
しかし、寸前のところでキラは襟元からスポッと抜け出し、転げるようにベットから降りると寝室を飛び出していった。
「キラ!どこにいくんだ!!」
アスランは慌ててキラを追いかけようとするが、いつもはトロいくせにこういうときばかりキラは早かった。
もしかして外に!!!
キラの足跡がわりに、開けっ放しになっている部屋の扉が玄関に続いているのを見てアスランはパジャマの上からコートを羽織ると、キラのコートを握って慌てて外へと出た。
遠くまで行っていたらどうしよう
しかし、アスランのその心配は杞憂に終わった。
積もった雪で滑って転んでいたキラは、マンションの入り口から出たすぐのところで見つかったからだ。
「にゅ〜〜〜、足が痒い〜〜」
「裸足で雪が降る中を走るからだよ。」
あの後、雪ですっかり体の冷えたキラを抱えてアスランはマンションの部屋へと戻った。
雪で遊びたいとキラは主張したが、ただでさえ免疫力の弱い種うさぎはたとえ風邪でも避けなければならない。
アスランは急いでお風呂を溜めると、キラをお風呂に入れた。
すぐに温めたつもりだったが、雪の上を走ったキラはしもやけになってしまったらしく、先からしきりに足が痒いと言う。
アスランはそんなキラの足に薬を塗ると、キラが掻いてしまわないように、靴下を履かせた。
「他に痒いところは無い?」
「う〜んとね。痒くないけど、ここが痛い〜」
そういって、自分の胸を指すキラ。
転んで打ったのだろうかと、アスランはキラの上着をめくった。
平べったいふくふくと柔らかそうな子供の胸には、あるのか無いのか分からないくらい小さな突起がついていて、それ以外何も見つからない。
「何もないよ」
「でもね。押すと痛いの〜」
やっぱり、転んだときにでも打ったのかもしれないと、アスランは湿布をその部分に貼り付ける。
「にゅ〜〜〜、冷たい〜〜〜」
湿布の冷たさに身を縮ませるキラ。
アスランはそれをほほえましげに眺めて、あまり深く考えなかった。
その痛みがキラの成長の前触れだということに・・・・・
※ ※ ※
小話6
※ ※ ※
「む、か、し、む、か、し、あ、る、と、こ、ろ、に」
『保健室』と大きく書かれた部屋から、幼い子供の声が聞こえてくる。
「あらぁ〜、キラ君おりこうさんね。字が読めるの?」
『かぐや姫』と書かれた絵本を一生懸命音読しているキラを見て、保健医のマリューが頭をなでる。
キラはえへへと得意そうに笑ったが、それは半分嘘だった。
日本昔話にはほとんどの冒頭に「昔々あるところに」が書かれてあるので、キラはたんにそれだけを覚えてしまっただけで、それ以外はまったく読めない。
「う〜ん、アスラン君には悪いけど、ちょっと席を外さないといけないの。ちょっとの間だけだから、キラ君お留守番しててくれる?」
キラの目線まで屈み、手を合わせてキラにお願いするマリューにキラは「はーい」と手を上げて返事をした。
いくら大学は普通の学校よりも自由が利くといっても、やっぱり、キラを教室に入れることができない授業もある。
そういう時、アスランはキラはディアッカかラクス、その2人も授業が入って無理なときは、保健室に預けていた。
マリューはキラが嫌いな人間の女の人だけれど、不思議と嫌いではない。
それはラクスも同様で。
2人はアスランとキラの邪魔をしないし、なんだか「お母さん」みたいなのだ。
といっても、キラは自分のお母さんに会ったことがないので、本当のお母さんがどんな感じなのか知らないのだが。
「ありがとう。ふふ、これはご褒美よ。」
マリューはそういって、キラの手にご褒美を渡し、そのまま保健室を出て行った。
何コレ?
キラはマリューから渡されたものをまじまじと見る。
30cmくらいの長さのある白い棒。
それをどう扱っていいのかわからず、キラはとりあえずそれを振り回してみる。
音が出るわけでも、光るわけでもない。
以前、ディアッカにもらったおもちゃはそうすると音が出たのに。
次にキラはそれを投げてみた。
ボテッ!
ボールのように跳ねもせず、鈍い音をたてて落ちるそれ。
????????
キラはそれを拾うと、再びまじまじと観察した。
匂いもかいでみるが、やっぱり何なのかわからない。
とりあえず、その棒の端を口にいれて舐めてみるが何の味もしない。
噛んでみてもやっぱり同じだった。
「にゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????」
食べ物でもないしおもちゃでもないし・・・・
よく分からないそれにキラの興味はだんだんと薄れ、その代わりに眠くなってきた。
「マリュー先生・・・・・・って」
10畳ほどの保健室にマリューの姿が無いことに気付いて、次はキラの姿を探すアスラン。
ソファーの背もたれの向こうから覗く、ピコピコと動いている長い耳にアスランは微笑む。
アスランが迎えにくるととキラはいつも飛びついてくるから、静かということは多分眠っているのだろう。
アスランの予想は当たっており、キラはソファーでねむっていた。
それを見て、相変わらず寝相が悪いなと笑うアスラン。
ソファーから今にもずり落ちそうになっている体勢でよくこうもぐっすり眠れるものだ。
半ば感心しているアスランはキラの握っているものに気が付いた。
それはどう見ても「犬用のゴムでできた骨」
マリュー先生またか・・・・・・・
何度キラは「種うさぎ」ですといっただろうか。
なのに、マリュー先生は犬用のおもちゃをキラに買ってくるのだ。
どうやら、マリュー先生にとっては種うさぎも犬も同じものらしい。
前回はリード。
その前は犬用の缶詰。
その前は・・・・・・
キラを起こさないように抱き上げながら、家に溜まっていく数々の犬用製品にアスランはため息をついた。
written by 地球儀の部分:朱緋様
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UpData 2005/09/28
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