オフィシャルや本編でも、もはや病的と言えるアスランのキラちゃん執着度合い。
しかし一概にアスランを責める訳にはいきません。
天然・ぽややんなキラちゃんは、目を離すと何をしでかすことやら、ハラハラ心配の毎日。
彼らの幼年時代はきっとこうなんだろうな〜・・・
そんな4部作です。



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アスランとキラ
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ある日アスラン(10)は道端に倒れている子供を見つけた。

「な…大丈―」ん、ちょっと待て―?アスランはもう一度よくその子供を見た。すると…

「キラ!!?」

「ん〜?」

アスランの声に伏せていた顔を上げたのは、紛れもなくアスランの幼馴染みであるキラ・ヤマト(10)だった。


「あぁ〜アスランだぁ♪」

笑顔でそう言う。

なんて可愛いんだろぉ‥―ってイカンイカン!!アスランは咄嗟に首を振り、魂を取り戻す。

「こんな所に寝そべって何してるんだ?」

駆け寄っていくと、キラはうつ伏せたまま言った。

「あのね、蟻がいるんだ」

「…蟻?」

アスランがキラの隣にしゃがみ込むと、確かにキラの目の前に蟻がいた。

「この蟻、餌を巣に運んでるよ」

「…でも巣穴なくないか?」

近くを見回すが穴はない。

「その石の近く…」

キラに言われ近くの中くらいの石を見ると、その縁の下に穴が僅かに見える。

「じゃ、もうすぐ巣穴に戻れるね」アスランが微笑むと、キラもまた極上の笑顔を見せる。

キラ〜〜!!アスランは心の中で狂喜乱舞する。

そんな事知るはずもないキラは今もなお、熱心に蟻を観察している。


「そういえば…」アスランはふと疑問を口にした。

「いつから見てるの?」

するとキラは一瞬キョトンとした後、天使の笑み(キラ・スマイル)を浮かべ言った。

「学校が終わってから」

「………え?」

今日は土曜日で学校は昼前に終わった。そして今自分は夕方の散歩に来ている。

「………ってまさか昼からずっとぉ!?」

「…あ、そうなるかな?」キラは子首を傾げて言った。


キラ…君は限度ってものを知らないのか――てか蟻も蟻でこんな近い巣穴まで餌運ぶのに何時間かけてんだよ!!アスランは明後日の方角を見ていた。

「アスラン??」

キラの声に正気に戻ったアスランは、キラを見て更に衝撃を受ける。

キ、キラァ!そんな…首を斜め45゜に傾けて上目遣いで「アスラン」なんて俺を呼ばないでくれぇ!!り…理性がぁぁ!!

「アースラーン??」

そんな彼の心理を知ってか知らずか、キラは座り込んでアスランのシャツの裾をチョンチョンと引っ張る。

……プチッ。アスランの中で何かが切れた。

「う…あぁ!??」

突然キラを抱き上げたかと思うと、アスランは急に走り始めた。

「アッ…アスラン??」

「アスラン・ザラ、このまま帰投する!」

「えぇ〜!?」

こうしてその晩、キラが自宅に帰ってくることはなかった。


「ごめんなさいね、ウチの息子が…」

「い〜え〜、こっちこそ。でもアスランはキラと仲良くしてくれて嬉しいわ」

「そう?昨日も二人部屋に篭もりっきりで…」

「まぁ、何してたのかしらねぇ」


※  ※  ※


「ねぇ、アスラン?」

「ん…」

学校の食堂でお昼を摂っていると、キラが尋ねてきた。

「僕たちって、恋人なの?」

「グフッ…!」

突然の事に飲みかけていた牛乳を吹き出しそうになる。

「大丈夫?」

「う…うん、大丈夫…」

アスランはなんとか持ち堪え、布巾で口を拭きながら聞いた。

「なんで突然?」

「あのねぇ…」

キラが困ったように言った。

「一学年上の先輩がね、僕を見る度“アスランの恋人”っていうの」

「ふぅん…」 アスランは味噌汁を啜る。

「この間なんか“キスできるのか”ってキスされちゃって‥―」

「!!?」今度は味噌汁を吹き出しそうになる。

んだとぉ‥
何処のどいつだ俺の可愛いキラにぃ〜!!
アスランの笑顔が微妙に引き吊る。

「それで…どうしたの?」アスランの質問にキラはキョトンとする。

「アスランとはちょっと違う感じだった」

「―‥ってしたの!!?」

「だめ?」

あぁっ、また首を斜め45゜に傾げて俺を見つめるなぁぁぁ!!
牛乳ビンを握る手に力が篭もる。


「おい、キラじゃねーか!」その時二人に近づいてくる人影が…。

「あ、あの人だよ?」

「……」

アスランが目をやると、そこには美しい銀髪をした少年と金髪に浅黒い肌の少年がいた。

「なぁにぃ、キラ姫は白馬の王子様と優雅に食事?」
金髪の方が絡んでくる。

「しっかし女顔だなぁ、お前。本当に男か?」
銀髪の方がキラの胸元を叩く。

「……」
プチッ。アスラン、キレる。

「すみません、先輩方」「あぁ?」二人がアスランを睨む。

「ハッ、王子様は姫を盗られてご立腹ってか?」

「アハハハッ、最高!」

二人の反応にアスランは更に笑みを深める。

「キラ…先に外出てて?」

「え…う、うん」

キラが外に出たのを確認して、アスランは二人を睨みつけた。

「なんだ?」

「生意気な奴だな」

「生意気…?生意気で結構!別に構いませんよ」アスランは不敵に笑う。

「今後一切キラに近づかないで下さいませんか、先輩方?」

「嫌って言ったら?」

「……」アスランは残酷なまでに美しい微笑みを浮かべ、二人に耳打ちした。


「ねぇ、アスラン?」

「ん…」

「先輩達、最近絡んでこないの」

「へぇ、よかったじゃないか」

「…うん」

「どうした?」

「あのねぇ、むしろ避けてくの…なんでかな?」

「……なんでだろうね」


※  ※  ※


それはある日の事…キラがアスランの家へ走って向かっていた時だった。

「うわぁ」

突如キラは誰かにぶつかってしまう。

「いた〜い」

キラが尻餅を突いて鼻を押さえていると、ぶつかった相手が手を差し出してきた。

「大丈夫かい?」

優しそうな目をしていた。

「ザラ委員長閣下、お怪我は!?」

「心配ない……君は大丈夫かね、少年」

そして再びキラを気遣う。キラはうなづいて立ち上がるとまず謝罪した。

「はは、しっかりした子だな」

そう笑う相手にキラは喜々として尋ねた。

「おじさん、ザラってもしかしてアスランの親戚?」

その無邪気な笑顔に思わずパトリックも顔を緩める。

「アスランは私の息子だよ。知ってるのかい?」

それを聞いてキラの丸い大きな瞳は更に輝きを増した。

「うん、アスランは僕の大切な友達だよ!」

それを聞いてパトリックは納得した。

「もしかして君がキラ君、かな?」

「うん、そうだよ?」

キラが子首を傾げる。(なるほど‥―)パトリックは言った。

「息子からよく聞いている。これからもアスランと仲良くしてやってくれ」

「うん!あ、でも…」

「?」

キラは恥ずかしそうに後ろ手を組むと、上目遣いにこう続けた。

「お願いするのは、僕の方かも…」

「ハハハハハッ!」

パトリックはキラの頭を撫でると、優しく微笑んだ。

「アスランは良い友達を持ったな」

「あはっ、僕も」


夜、アスランがリビングに降りてくると、両親が談笑していた。

「あぁアスラン、丁度良いトコにきた」

「父さん、今日キラに会ったそうよ」

「え、キラに?」

「あの子はいい子だな」

「でしょう?」

「今度また家に呼びなさい。ああいう子、好きだよ」

「…はい。ではお休みなさい」

「あぁ」

(―‥父上がライバル!?)

こうしてアスランの父への不信感は芽生えたのだった…‥。



※  ※  ※


今日は学芸祭。
アスランとキラのクラスは演劇をする事になった。

「やっぱり嫌だよぉ〜」

「何を言ってるんだキラ!可愛いよ」

「でもぉ〜」

その演目は『白雪姫』。
王子がアスランで姫がキラだった……勿論アスランの画策だが。

「なんで僕なの〜」

姫のドレスを着て座り込むキラ。


その涙に潤んだ紫水晶で見上げられ、アスランは脳天に電撃を食らった。
キ、キラァー!!なんて愛らしいんだ……
あぁ、このまま何処かへ連れ去りたい、そして食べてしまいたいっ……
てか、もう食べてしまおうか!!!?
――もはや王子ではなく狼である。


「?アースラーン???」

いつにも増して変な幼馴染みに、キラの疑問符の数も増えてしまっている。

アスランは彼の衣装の裾をチョンチョン引っ張りながら、不思議そうに自分を見上げてくる幼馴染みに、更なる欲望を掻き立てられてしまった。

―‥プチッ。
毎度お馴染みアスランのプッツン。キラを抱き抱えると、一目散に控え室を出ていった。


「うちの子…なんで頬が赤かったのかしら?」
「あらキラも?アスランなんか平手打ちの痕らしき赤みがあったわ」
「……なにがあったのかしら?」

written by キタ様

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UpData 2005/09/29
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