Part1は、ピンクちゃんの生みの親・アスランとピンクちゃん育ての親・ラクスによる会話。
Part2は、よく喋るように教育されたピンクちゃんの、とある発言に放浪されるキラちゃん(アスランとキラちゃんは同棲中の設定)。



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ハロの記念日
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■□■ その1 ■□■
ハロハロ、ゲンキ!!

オマエモナー!

アーソーボ!!

テヤンデイ!!


そして、更に覚えたてのアノ言葉を発した瞬間、僕は遊びに来ていた創り主に突然むんずとひッ捕まえられ、15分後にはその言葉を強制消去されてしまった。

ひどい事するなぁ。


   +


「ラクス・・・。」

「はい、なんですか?アスラン。」

ラクスはにこやかな笑みを浮かべた。
が、いつもなら戸惑いつつも笑顔を返すアスランは、今日は引きつった顔を向けたまま。

「ハロには確かに言語学習機能はついてますが・・・アレはちょっと・・・・・・。」
「そうなんですの!もう沢山覚えましたでしょう?わたくし、ピンクちゃんに言葉を教えてあげるのがとても楽しくて・・・」
「・・・・・・ということも、アレもあなたが教えたんですか・・・?」
「アレ・・・と申しますと?」

あくまで無邪気に不思議そうに聞いてくるラクスの澄んだ瞳に、アスランはあれは何かの手違いだったかと思ったが・・・

「あの・・・“イテモウタロカ”・・・・・・・というのは・・・。」

自分で口にしてみて、その言葉の奇異を改めて思い知る。
それは所謂地方言語であり、品の良くないスラングだ。
天下のアイドルであるラクス・クラインが口にするなど考えられないし、その周辺で聞かれるような言葉でもない。
しかし、ハロの学習機能は一度聞いただけで覚える設定にはなっていないのだ。
それなのに・・・謎である。

しかし、思案に暮れるアスランにラクスはなんでもないように言った。

「勿論、わたくしが教えたのですわvv。」
「そうですか・・・・って、ええっ!!?」

アスランは思わず耳を疑う。

「あ・あ・あ・あなたが教えたんですか!?」
「はい。・・・そんなに驚くことでしょうか?」

―――オドロクコトデスヨ。

アスランはもう少しでそう返すところだったが、キョトンと小首を傾げる彼女に対しそう言うのも大人気ないと言葉を飲み込み、

「え、ええ・・・・少し。」

と言うに留めた。動揺に声が震えたのはまだ若く人生経験の浅い彼なのだからしょうがない。
が、ラクスはそんなアスランの様子など気にも留めずに楽しげに言葉を続ける。

「そうですか?でも、わたくしがピンクちゃんに教えたのは、ちょっとフレーズが違って・・・。」
「フレー・・・ズ・・・・・ですか・・」
「はい。わたくしが教えたのはこうですわ。」

そういったラクスは。



「・・・いてもうたろうか・・・・・・。」



一瞬の真夏の恐怖だった。
突然ラクスの顔に影が差し、息苦しいほどの暗雲が立ち込めたかと思った刹那。
穏やかな春の空を映したラクスに瞳がカッと光を放った。

が、次の瞬間には幻のように全てが消えうせ、プラントのアイドル、ラクス・クラインが静かにたたずんで。

「・・・ですわvv」

と、心を癒すと言われる笑顔を浮かべた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうですか。」
「はいvvv」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ラクス。」
「はいv」
「・・・すみませんが、急用を思いつきましたので・・・。」
「思いつく?」
「いえ!!思い出しましたので!」
「ああ、思い出した、ですのね。」
「・・・・・・今日は、これで失礼します。」
「まあ・・・、それは残念ですわ。でも、急用では仕方がありませんわね。」

ラクスは少し残念そうに、それでも淑女らしくあからさまな落胆を見せることなく席を立った。
続いて席を立ち、ラクスに見送られてクライン邸を後にしたアスラン。

彼は、今日ここで見た事実を忘れることを心に決めた。
そして、ラクスに断りなくハロの言葉を削除したことについては・・・気付かれないことを願うばかりである。





■□■ その2 ■□■


「キラ!それと、アスラン(明らかについで)。来て下さったんですのね!!」
「本当にひさしぶりだね、ラクス!!・・・あ、コレお土産。お茶菓子に出して?」
「まあ・・・そんな気を遣うことありませんのに・・・。お菓子ですの?」
「そう!ここのロールケーキは絶品なんだよ。中にフレッシュフルーツが一杯入っててね・・・」
「それは楽しみですわ!・・・・・オカピ、コレをアリスさんの所に持って行ってくださいね。」
「・・・・・・・・・・・。」

久しぶりの再会にキラとラクスは嬉しげに手をつないで庭へと歩き出し、その後ろでアスランは複雑な張り付いた笑顔を浮かべた。

戦争は終り、アスランとラクスの婚約は既に解消されて久しく、アスランとキラは結婚間近。

普通に考えれば仲が良いはずのない面子だが、この仲で一番仲がいいのがラクスとキラだったりするのだから不思議だ。

勿論、アスランとキラは恋人同士でもうすぐ夫婦になる間柄だが、キラはそのアスランよりもラクスとの時間を優先することが多い。

一緒に住んでいるアスランより、なかなか会えないラクスのほうを優先させるのは当然だとキラは言うが・・・アスランにしてみれば複雑だ。

が、まさか、「俺とラクスとどっちが大切なんだ」などという沽券に係わる台詞は口にするわけにはいかず・・・曖昧な態度でキラに引きずられるばかり。

とはいっても、キラもそうそうラクスと会っているわけではない。

戦争終結後、平和の象徴として忙しい日々を送っているラクスと、強硬派の残党狩り・・・と言えば言葉は悪いが、戦後処理に追われてこちらも忙しい日々を送っているキラとアスラン。
この3人が顔を合わせるのは多忙な中のスケジュールを合わせなければならず、なかなか難しいことなのだ。

だが、終戦から3ヶ月が経ち、漸く情勢にも一段落ついたこともあって、キラとラクスはうららかな午後のお茶を楽しむ時間をひねり出したのである。

当然そうなるとアスランもキラを一人で行かせるわけには行かず・・・今日のようにお供するしかなくなるわけで。
数年前の真夏からラクスが苦手となったアスランにとって、今日も忍耐の時間が始まった。





いつものあずまやに辿り着いたが、もっぱら話すのはキラとラクス。
アスランは横からその会話には加わらず、静かに聴いているだけだ。


「・・時間が取れたのもあるんだけど、それと・・・、今日はラクスに約束してたコレを見せようと思って。」
「まあ・・・!それでは・・・、」
「うん。ほら、出ておいで。」

アスランを置いてきぼりにして進められる会話。
キラが、出ておいでと手にしていたバッグを開いた瞬間に出てきたのは・・・


――――ハロハロ!!


パープルのボディーカラーをしたハロだった。

「この子がキラのハロちゃんですのね!」
「そう。僕の目の色に合わせて紫にしたんだって。・・・ね、アスラン。」

突然話しかけられたアスランは、「あ、ああ・・・」と気のない返事を返すが、既にキラとラクスの興味は紫のハロに移ってしまっていて気に留められもしない。
不幸である。

紫のキラのハロは、ラクスのピンクちゃんとまるで挨拶を交わすように、
―――ハロハロ!
―――ハロハロ、ゲンキー!!
と、ボヨボヨと音を立てて跳ね回っている。

その様子を楽しげに見ながらキラは少し苦笑ぎみに言った。

「作ってもらってからすぐだから、まだ初めにインプットした名前くらいしか言葉は覚えてないんだよね。」
「そうですわね。でも、言葉を教えてあげるのも楽しみですもの。」

ハロに言葉、というキーワードに嫌な記憶を刺激されてしまったアスラン。
思わず椅子を引いてしまったが、そんなアスランを気に留めた様子もなく、ラクスはのんびりとキラと会話を楽しんでいる

「でも、まだ一つも言葉を覚えていないのですか?」
「うーん、まだインプットした以外の言葉は聞いたことないんだ。・・・・・・なにか新しい言葉喋らないかな。」

そういって、キラが跳ね回る紫のハロを捕まえて、からかうように指先でつつくと、ハロは目を白黒させるように左右の目を点滅させ。


突然、今まで発したことのない言葉を音にした。




―――ハロハロ! イイ!!イクぅ、アスラン!!
(なぜピンクなのかはご自分でお考え下さい)




その場が一瞬真っ白に染まった。
キラとアスランは勿論、ラクスまで固まって顔を引きつらせている。

誰もフォローできないこのハロの発言。
しかも、ハロは壊れたようにイクーイクー!!と叫び続ける。
白い空気が更に音を立てて崩れ、正に燃え尽きるかと思われたその時。

この場に救世主が現れた。
がしょがしょ、と音を立てて、お茶とケーキを運んできたオカピである。

ピー!と、音を立てて注意を引くと、早くお茶を取れ、とばかりにテーブルの前に止まったオカピに救われる三人。
ラクスは何事もなかったかのようにお茶を並べ始め、その間にキラはハロのスイッチを切り、一番の被害者件加害者であるアスランは、帰ってから巻き起こるだろうキラの八つ当たりを想像して目眩を起こした。

その日のお茶会が普段より遥かに早く終了し、キラが逃げるようにクライン邸を辞したのは言うまでもない。



追記。
アスランはそれからしばらくの間、キラから禁止令を食らった。
そして、問題のハロは帰宅後すぐに初期化され、更に言語学習機能は当然の如く外されてしまったという。


ハロハロvv


written by 氷の月サン

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UpData 2005/12/23
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